ビヘイビアモード
ビヘイビアモードの初期セットの作成は、キャラクターセットアップサービスの一環として弊社で行います。ただし、SGX Studioを使用して、ユーザー側で編集可能です。
ビヘイビアモードでは、ビヘイビアパターン全体をラベル1つで簡単に指定できます。アニメーションの進行中、キャラクターは常に何らかのビヘイビアモードになっています。ビヘイビアモードは、キャラクターのビヘイビアをセットアップの時点でデザインできるクリエイティブなツールです。
ビヘイビアモードは、「うれしい」、「怒っている」、「疲れている」、「苦悩している」といった心や身体の状態と対応させることができます。キャラクターの一連のビヘイビアモードは全面的にアニメーターが定義し、制限はありません。必要に応じていくつでも作成できます(ビヘイビアモードの設定方法については、SGX Studioの製品ガイドをご覧ください)。初期キャラクターコントロールファイルには、システムによって自動で検出されるモードであるポジティブ、ネガティブ、エフォート、ニュートラル(SGXのオートモードに関するページをご覧ください)と対応した、一連のデフォルトビヘイビアモードが含まれています。
以下の動画は、ビヘイビアモードが次々に変化するアニメーションの例です。その時点のビヘイビアモードが「mood」として画面上部に表示されます。
ビヘイビアモードの定義
原則として、ビヘイビアモードの定義には、そのモードの典型となる各種のノンバーバルなポーズ(「エクスプレッション」と呼びます)を含めます。たとえば、「Happy」(うれしい)というビヘイビアモードがある場合、そのモードには、うれしさを表すさまざまなエクスプレッションを定義します。キャラクターがあるビヘイビアモードになっているときは、そのモードに含まれているエクスプレッションが採用され、弊社のアルゴリズムで決定されるタイミングやダイナミクスに従って自動で展開されます。これにより、絶えず自然な表情の顔となります。
ビヘイビアモードを構築するときは、さまざまなエクスプレッションを含めるようにしましょう。感情や状態全体を典型的なエクスプレッション1つで表現しようとすると、ビヘイビアが反復的で先が読めるものになりかねず、きわめて不自然です。生身の人間が完全に同じフェイシャルエクスプレッションを繰り返すことはないので、エクスプレッションのバリエーションをいくつか用意したうえで、キャラクターが機械仕掛けではない生物らしく見えるようにしてください。
以下の画像は、「エフォート」のビヘイビアモード用に作成された一連のエクスプレッションを並べたものです。








エクスプレッションの定義
個々のエクスプレッションは、キャラクターのマッスルのポーズとして定義します。たとえば、次のエクスプレッションは、その下の表に記載したマッスルの設定で構成されています。

brow_lower_L | 0.94 | inner_brow_lower_R | 0.35 |
各マッスルはリグのアニメーションターゲットを設定することで形成されるのに対して、各エクスプレッションは、マッスルを設定することで形成されます。この階層構造を示したものが以下の図です。

エクスプレッションは顔全体で行うものです。そうすることによって自然な顔を保ち、動きがまったくない部分もなくなります。また、エクスプレッションは顔だけに限定されません。頭のモーションなど、顔以外の部位も含めることができます。キャラクターの筋肉組織全体を使ってエクスプレッションを定義することで、まるで生きているかのような動きを作り出せます。
アニメーションの進行中、エクスプレッションの選定、タイミング調整、ブレンドは自動で行われます。また、エクスプレッションのスケールも、スピーチの強度に応じて変わります。上の画像のエクスプレッション例を、スケールごとに表したものを以下に示します。

0%

20%

40%

60%

80%

100%
ただし、新しいエクスプレッションを定義するときは、そのエクスプレッションについて考えられる最大限の強度でポージングするようにしましょう。エクスプレッションでのポージングが弱すぎると、あまり印象的なアニメーションになりません。なお、実際のアニメーションでエクスプレッションの強度が100%になることはほぼありませんが、最大限のポーズで設定しなかった場合、低いスケールは想定よりも弱く表示されてしまいます。また、特定の強度を出したいのに出せないという状況にも陥ってしまいます。
エクスプレッションを定義するときは、そのエクスプレッションで最大限の強度でポージングするようにしましょう。
エクスプレッションは、そのキャラクター特有のしぐさを表現するのに便利です。非対称性などの癖は、エクスプレッションを利用することによって簡単に具現化できます。
エクスプレッションのインポート
エクスプレッションは弊社のマッスルポーズで構成されていますが、リグパラメータそのものがキャラクターのポーズになっており(たとえば、モーションキャプチャーや手描きアニメーションの成果物など)、それをエクスプレッションとして使用したい場合もあるかもしれません。これを実現するため、ポーズをマッスルスペースにインポートできるようになっています。SGX Studioは、リグにあるアニメーションターゲットの現在のポーズに最もよく合致しているマッスルのアクティベーションを検出するツールを備えています。検出するには、ポーズの作成に使用するコントロールがアニメーションターゲットに含まれている必要があります。
デフォルトのビヘイビアモード
各キャラクターには、他のモードが指定されていない場合や自動適用されていない場合にアクティブになる、デフォルトのビヘイビアモードが1つあります。通常、デフォルトのモードは感情がニュートラルであるときのモードにします。ニュートラルのモードにエクスプレッションを適用することもできますが、極端な気分や身体的状態が表れているものにはしないでください。
Bi-Tonalのビヘイビアモード
ビヘイビアモードは、Bi-Tonalの場合とUni-Tonalの場合があります。Uni-Tonalモードには、エクスプレッションのプールが1つ含まれています。Bi-Tonalモードには、ハイトーンエクスプレッションとロートーンエクスプレッションという2つのプールが含まれています。両者の区別は、スピーチの抑揚パターンに基づくものです。処理の進行中、ハイトーンエクスプレッションはピッチが高いときまたは強まっているときに適用され、ロートーンエクスプレッションはピッチが低いときまたは弱まっているときに適用されます。この2グループに含めるエクスプレッションは、互いに対照的な特徴を持ったものにする必要があります。推奨される特徴は以下のとおりです。
ハイトーンエクスプレッション⬆️ | ロートーンエクスプレッション⬇️ |
エネルギッシュ 口を開いている 眉が上がっている 目を見開いている 頭を上げている 視線を上げている | 落ち着いている 顔をしかめている 眉を寄せている 目を細めている 頭を下げている 視線を落としている |
Bi-Tonalモードを利用して、声の上がり下がりに応じてエクスプレッションの性質を変えると、より敏感に声の変化に応え、よりきめ細かくスピーチのパターンに合致するフェイシャルアニメーションになります。つまり、演技の説得力、状況との整合性、表現力が全体的に向上します。
ビヘイビアモードのベストプラクティス
ビヘイビアモードを作成する際のベストプラクティスを以下にまとめました。
特にスピーチ中に使用すると考えられるビヘイビアモードは、Bi-Tonalにしましょう。
各エクスプレッションでは、実際の人間の顔で考えられる最大限の強度でポージングしましょう。
モードごとにエクスプレッションのバリエーションをいくつか用意して、同じビヘイビアが繰り返されるのを避けましょう。バリエーションの数の目安は、トーングループごとに7つ以上です。
エクスプレッションではさまざまな筋肉組織を動かして、キャラクターがまるで生きているかのような動きをつけるようにします。じっと動かない部位がないようにしてください。エクスプレッションに頭のマッスルを含めて、頭のモーションを生成しましょう。触角など、人間にはない部位を動かす場合もエクスプレッションを使用しましょう。
非対称性など、特有の癖をエクスプレッションに追加しましょう。
非対称性については、どちらの側に適用するかをむやみに切り替えないようにします。たとえば、キャラクターが左の眉を上げるか右の眉を上げるかが場面ごとに異なっていると、奇妙に見える場合があります。非対称性は違和感のないものにし、どちらか一方の側に決めて適用してください。
スピーチ中に使用されるビヘイビアモードを作成するときは、リップのマッスルの位置移動が極端にならないようにします。極端なものにすると、スピーチの妨げになるおそれがあります。また、顎は可動限界まで開いている状態にはしないでください。